19世紀に存在していた!?メビウス+ルパート「GRENADE」鉛筆削り
こんにちは、クリポンです。
流行りのデザインというのは時と共に変化していくものです。人間には飽きもあるわけで、しばらくすれば古臭く感じてしまう世の常と言いましょうか。
しかし何十年も経つと、かえって斬新なデザインのように感じられる場合もあります。何とも不思議なものです。
今回は19世紀末には存在していたと言われる、ちょっと変わった形の1穴鉛筆削りについてお届けします。
Moebius+Ruppert(M+R) レトロすぎて斬新に感じる!?デザインの鉛筆削り
M+Rが誇る100%ドイツ製
メビウス+ルパートのブラス製鉛筆削り「GRENADE」です。
ドイツのブランド「メビウス+ルパート(M+R)」は100年以上にわたって鉛筆削りを中心に製図用品を製造しています。驚く数の鉛筆削りのラインナップがあるなか、その一部が日本でも販売されています。
メビウス+ルパートが誇りとしているのは、設立以来、全ての製品をドイツで製造していることです。現在はドイツのエアランゲンに工場があります。
他国に製造を委託することが多い昨今、購入者にとっても100%本国製というのは品質の面において安心できます。
「メイド・イン・ジャーマニー」というラベルは、20世紀初頭の頃、信頼のおける良質な製品の代名詞として、一種のブランド化していた時代がありました。今もそのイメージは変わらずにあり、製品に大きく表示されているmade in Germanyは自身の表れですね。
鉛筆削りの大きさは親指くらい?
今回ご紹介するのは1つ穴式の普通鉛筆(色鉛筆)用です。鉛筆の軸の直径は8.2mmまでで、それ以上の太軸鉛筆は穴に入りません。
この鉛筆削り、写真では大きく見えるかもしれませんが、手に取ると意外と小さいことに驚きます。長さは2.5cmほどです。
親指の第1関節くらいまでの大きさです。いや、手の大きい方ならそれよりも小さいでしょう。
小さな見た目に反して、ブラス製ということで23gの重さがあります。手に乗せるとずっしりと重さを感じます。
でも23gというのは特に重いというわけではなく、手動鉛筆削りではよくある重さなんです。
例えばファーバーカステルのこちらのプラスチック製のものは24gとほぼ同じ重さです。
重さが同じでも、面積が増えると押す力が分散されて軽く感じるということですね。
なんと19世紀には存在していたデザイン
この鉛筆削りを見て皆さんはどう思いますか。奇抜というか独特な形をしていて、新しいデザインなのかと思ってしまいそうです。
実はその逆で、とても古くからある鉛筆削りなのです。
1949年にドイツで出版された本「Handbuch für Papier und Bürobedarf (紙製品と事務用品に関するハンドブック)」によると、このデザインの鉛筆削りは1890年代から存在していたとのこと。それをメビウス+ルパートが継承しているということで、歴史的な鉛筆削りなんですね。
レトロなデザインというのは時を経ることで、回り回って斬新なデザインと映ることはよくあること。これもその一例でしょう。
円形の筒の一部を切り取って刃を付けたというような、ちょっと不思議な形をしています。
ナイフで潔くスパッと切ったかのような分厚い断面が見えています。あえてこんな部分を見せるところもなかなかおしゃれです。
裏から見れば金属の塊そのままというか芋虫!?鉛筆削りとは分かりません。
ローレットの模様が入れてあり、小さいながらも滑りにくく持ちやすいです。
物騒な名前「Grenade」って何?
初めて見た時、巻き貝みたいでかわいいなと思ったのですが…でも違いました。実はこれ、もっと物騒なものでした(笑)。
この鉛筆削りの名前は「grenade」。grenadeは日本でそのまま外来語として使うので、何のことかすぐに分かる方もいらっしゃるでしょう。そう、グレネードのことです。メビウス+ルパートの拠点があるドイツ語だと「granate」となります。
グレネードとは小型爆弾(擲弾 てきだん)のことで、例えば手榴弾(しゅりゅうだん)などがあります。言われてみればそんな風に見えます。
この鉛筆削りは英語圏ではブレット(bullet : 弾丸)とも呼ばれています。
grenadeは元々フランス語で、私の大好きな果物「ザクロ」のことを指しますが、転じて擲弾の意味も持ちます。
まあザクロの形態(小さな粒がたくさん詰まっていて、それらがこぼれ落ちる)を思えば、同じ言葉が用いられるのも分からなくはないですね。
3軸や6角軸も削れる!
早速削ってみます。鉛筆の軸の形には丸軸、3角軸、6角軸などがありますが、この鉛筆削りの穴に入る大きさならば、どの形でも削れます。
こちらの6角形鉛筆と色鉛筆を削ってみます。
芯の先は良い感じに鋭く削れました。
試したどちらの鉛筆もファーバーカステルで、穴の直径に対してちょっと小さめです。削り穴の中で空間の余裕があるためか、力を入れて押し込みすぎると先端が折れやすかったので、力を入れず優しく削るようにしたら上手く削れました。手動は鉛筆削りによりますが力加減も大事です。
替え刃はgrenadeの品番である0604用を選んでください :
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道具にこだわる面白さ
削りかすを溜める容器のない、刃が剥き出しになっている鉛筆削りは後の処理が少し面倒です。それでも時間に余裕があるときなど、かすが出てくる様子を眺めながら、芯の尖り具合を確かめながら削るのが私は好きです。とはいえ削らなくてはならない色鉛筆が何本もあるときは容器付きの削り器で一気にやってしまいますが。日々使う道具にこだわってみるのもなかなか面白いと思う今日この頃です。